半導体の重要性は電子機器の発達によってますます増加している。
米中対立が深刻さを増す中で、半導体は重要戦略物資となって製造工場の立地がそのまま地政学的リスクに直結する。
その中でひときわ大きな存在感を持っているのが台湾のTSMCである。
中国が台湾侵攻を画策するが、アメリカはそうはさせじと近海を戦艦で準衛してにらみを利かす。また、アリゾナ州に莫大な補助金を条件に生産工場を建設させ、国内での生産体制を整える。ただTSMCも完全な主導権は渡したくなく、最先端(2ナノ)の生産は依然台湾に残している。
2020年からアメリカは中国への締め上げ(輸出禁止)を強化し、米国製の半導体製造装置はおろか、米国製部品を使った他国の製造装置の輸入まで禁じた。
これにより中国は大きなダメージを被ったが、それを境に自国での研究開発を急速に進化させて猛追している。
またアメリカ政府としては包囲網を強めても、企業としては大の得意先の中国には販売をしたいので、あの手この手で販売を継続する。
世界の企業の中でも唯一この企業しかもっていない特別な技術が存在し、それらが半導体のチョークポイントとなっている。例えば、英国のアーム(ソフトバンクが株主)、オランダのAMSLなどである。ソフトバンクはアームを米国企業の売却を計画したが、虎の子技術を流出させたくない英国政府がこれを認めないなどの動きも起こっている。
日本は残念ながらチョークポイントとなるような重要技術を要する企業はない。
それでも、半導体製造装置の東京エレクトロンやウエハーの信越化学など一定の企業は存在する。また、TSMCの熊本工場建設や、IBMから技術供与を受けるラピダスの発足など明るい要素も出てきており、今後の立ち直りに期待したい。